適応症

 適応症

  はり・灸は、世界保健機構で49疾患に有効であると承認されています。

欧米では(日本よりも)鍼灸施術は広く認められています。日本でも主な大学病院には、鍼灸科が併設され、現代医学と併用治療も行われいます。

 世界保健機構(WHO)で認定の代表的疾患

 
神経系神経痛・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛不眠・ノイローゼ
運動系関節痛・リューマチ・頸肩腕症候群・五十肩・腱鞘炎・腰痛
循環器系心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れなど
呼吸器系気管支炎・喘息・風邪および予防など
消化器系胃腸病(胃炎。消化不良、下痢、便秘)・肝機能障害・十二指腸潰瘍
内分泌系バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血など
生殖泌尿器膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎
婦人科系更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・不妊
耳鼻咽喉科中耳炎・耳鳴・難聴・メニアル氏病・鼻炎・蓄膿症・咽喉頭炎
眼科系眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・もももらい
小児科系小児神経症(夜泣き、かんむし、不眠)小児喘息・虚弱体質改善

 当院の得意とする症状

 上に掲げた疾患のうちで、当院で特に実績のある疾患を下記します。

神経系:自律神経失調,顔面神経麻痺、不眠       

運動系五十肩、座骨神経痛、ぎっくり腰

消化器系便秘過敏性大腸炎

耳鼻咽喉科医系難聴、耳鳴り

婦人科系更年期障害、不妊症

 各疾患に対して、当院の施術法またその実績を以下に纏めました。

是非一度、鍼灸の効果を体感ください。

1.神経系疾患

1)頭痛

 

         片頭痛

原因  種々の原因で脳内の血流がアンバランスと成り、片側の一部の血管が膨張すると、それを取り巻く神経が過剰反応し痛みを発生します。
症状  視覚障害(閃輝暗点)や運動障害(手足のしびれ)や自律神経症状(悪心、嘔吐)などの前駆症状がみられる事もあります。頭痛はこめかみから目にかけての一側性で、女性に多く見られます。
施術   側頭部(懸顱、懸釐、頷厭)後頭部の経穴、に刺鍼し、その部分の筋肉の緊張を緩め頭部へ流出入する血流の流れを改善します。更に、副交感神経を優位にする呼吸法を実施する事で改善が促進されます。

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        片頭痛の模式図                            片頭痛の治療施術点
    

   緊張性頭痛

原因  精神的な緊張で頭頚部の筋肉が持続的に収縮すると、内部の血管の血管壁を走行している感覚神経線維を変形させてNa+を流出し興奮させ痛みが発生します。
症状  痛みの頻度は、毎日~十数日に一回で、痛みは30分~一週間ほど続きます。痛みは両側性、頭部全体、後頭部に圧迫感、締め付けられる感じになります。
施術   首、肩の筋肉の緊張を緩め頭部へ流出入する血流の流れを改善する施術を行います。図1.2に頭皮への血流の流れを示します。後頭部(風池)/首(天柱)/肩(肩正)血流に沿った経穴に鍼針、置鍼します。また、交感神経が優位の患者様には、呼吸法を指導し改善効果を上げています。

 

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  頭皮への血流の流れ    関連する筋肉    緊張性頭痛の治療施術点

2)顔面・三叉神経麻痺

 
       顔面神経麻痺
 原因  突発性で不規則な顔面筋の攣縮が起こる。中年、特に女性に多い。加齢により動脈硬化が進行し、顔面神経を圧迫することによりおこるとされています。
 症状  眼輪筋の微細な攣縮から始まり、徐々に半面の顔面筋に拡散して不規則な攣縮が起こります。特に、口元付近の攣縮が最も多く見られます。
  施術  顔面神経の刺激を目標としてその経路の経穴(下関、聴会、翳風)を施術するとともに、顔面の表情筋の改善を目的として、その支配筋肉の経穴(下関、地倉、人迎)を施術します。特に低周波電気鍼の併用が有効です。

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顔面神経の経路  顔面神経麻痺の治療施術点

 
 

         三叉神経痛

 原因  三叉 神経支配領域で、焼かれるような、またはナイフで切られるような激痛が起こります。発祥年齢は50~60歳台に多く、また女性の方が多いです。加齢により動脈硬化が進むと、血管が三叉神経と接触圧迫し神経が興奮する為とされています。冷たい風に片側だけ長時間あたるなどで誘発されることがあります。
  症状  電撃が走るような、ナイフで刺されたような、またえぐられたような激痛が発作的に起こり、数秒から数分続き、またその発作が反復します。疼痛時に、顔面の発赤、結膜充血、流涙を伴うことが多いです。
  施術  顔面の三叉神経支配領域、眼神経、上顎神経、下顎神経の周辺の経穴、特に下関、聴会、翳風 刺針施術します。顔面神経麻痺の施術と同様に低周波電気鍼の併用が極めて有効です。

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3)自律神経失調症

 
 

交感神経過剰(ストレス傷害、不眠)

 原因   過度のストレスでアドレナリンが過剰と成り、血管収縮による血流障害また、顆粒球の増大&リンパ球の減少による免疫力の低下が原因で傷害を起こします。
 症状  過度のストレスで胃潰瘍、ガン、糖尿病、リューマチなど組織破壊の疾病症状が現れたり、また血管収縮から肩こり、頭痛、高血圧、心疾患も現れます、更に不眠、イライラなどの精神的疾患症状も現れます。
 施術  鍼施術は基本的に、自律神経に作用し交感神経の過剰を押さえる効果があります。上肢並びに背部への施術が効果的でまた、呼吸法の改善も効果が大きく、特に吐く時間の長い呼吸を習慣にすることで、改善が図れるため併せて呼吸法の指導を行います。
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図3.1 交感神経の過剰から起こる疾患
 
 

副交感神経過剰(うつ、倦怠感)

 原因   副交感神経が過剰になると、アセチルコリンが過剰と成り、血管を拡張し頭痛、うつ症状を引き起こす。また、リンパ球が増大しアレルギー症状が起こり、プロスタグランジンの増加で知覚神経が過敏となり皮膚疾患を起こします。
 症状  副交感神経が極度に過剰になると、うつ、倦怠感の症状を起こします。また、くしゃみ・鼻水などのアレルギー疾患、皮膚のかゆみなど皮膚疾患も現れます。
 施術  鍼施術は、自律神経に作用し副交感神経が余りにも過剰で”うつ症状”の方には、逆に、副交感神経を下げて自律神経のバランスをとる作用があります。下肢並びに腹部への施術が効果的で 、上記の症状の改善が図れます。更に、正しい呼吸法の指導を行い症状の改善を図っています。
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図3.2 副交感神経の過剰から起こる疾

2.運動系疾患

1)腰痛症

 
 

     腰  痛

原因  心因的要因や社会的要因が加わり、腰痛が三か月以上続くものを慢性腰痛症といい、鍼灸施術の対象となります。主に椎間板性腰痛症、椎間関節性腰痛症、筋筋膜性腰痛症、などが引き金となって生じると考えられています。椎間板の周辺のコラーゲン繊維の軟骨は、加齢、荷重ストレスで退行、劣化し圧迫され、そこから出る神経が圧迫され、対応した筋肉に鈍痛を起こします。また、筋筋膜性腰痛症の後遺症では、荷重ストレスで、疲労物質(乳酸)や痛み物質(ヒスタミン)が蓄積する為、鈍痛を起こすようになります。
症状  椎間板が由来の腰痛症では、椎間板から出る神経が支配する(同一高位の)腰の筋肉に鈍痛、疲労感、脱力感が起こり、更にその神経に対応した臀部・下肢の部分にも痛み(関連痛)が現れます。筋筋膜性腰痛が由来の腰痛症では、障害を受けた筋肉そのもに鈍痛が生じると共に、周辺の協同筋にも痛みが発生します。
施術  椎間板が由来の腰痛症では、同一高位の脊髄神経の後枝の支配領域にあたる傍脊柱部の多裂筋、回旋筋、最長筋,腸肋筋への刺鍼施術、更に関連痛がでている領域への刺鍼施術が有効です。また、筋筋膜性腰痛が由来の腰痛症では、障害筋の障害部、起始・停止部、並びに障害筋の協同筋への施術を行います。また障害筋の拮抗筋の施術も施術効果を高めます。自宅でできる適切なリハビリ腰痛体操を指導し、更なる改善をはかっています。

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腰部の筋肉   典型的な腰痛発生部位

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慢性腰痛の施術点  ぎっくり腰の施術点  座骨神経痛の施術点

  
 

      座骨神経痛

原因 座骨神経や座骨神経根の圧迫、椎間板ヘルニア、梨状筋症候群、腰部脊柱管狭窄症などが原因でおこります。 
症状 坐骨神経が走行している部位、即ち、腰部、臀部、大腿後面、下腿後外側及び足外側で痛みを発生します。1)病変が椎間(孔)にある疾患の場合:発病は急性の場合が多く、ナイフで刺されたような痛みで夜間にも痛みがあります。また、2)病変が椎間外にある疾患の場合:発病は慢性的で、疼痛部位は坐骨神経に沿って発生し、坐骨神経穴近辺の大殿筋や梨状筋、大転子付近、に圧痛が発生し、特に腓腹筋(ふくらはぎ)筋腹の圧痛が強いことが多いです。
施術 病変が2)の椎間外にある疾患の場合の方が施術の効果が良好で、大殿筋や梨状筋、大転子付近、腓腹筋(ふくらはぎ)筋腹に低周波電気鍼を施術すことにより、早期の回復が図れています。また1)の病変が椎間(孔)にある疾患の場合は、2)の場合と同様に坐骨神経の走行する筋肉に施術するとともに、腰部にも低周波電気鍼の施術を行うことで有効な効果が得られています。

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坐骨神経の走行経路 座骨神経の皮膚支配領域 坐骨神経痛の施術点

 
 

     ぎっくり腰

原因 筋筋膜性腰痛や椎間板ヘルニアの初期症状に現れることが多く、不適切な姿勢や力の入れ方で、腰部の筋、腱など軟部組織が損傷されることで引き起こされます。
症状 腰部の両側や片側に損傷が起こった時、すぐに激しい痛みが発生し、体位変換ができなくなります。持続的な痛みで、咳嗽やくしゃみなど腹部に力を加えると痛みは加重されます。背部の筋肉を伸ばすとき痛みを発生するため、前かがみに腰を曲げることができず立って歩くのが難しい場合も多いです。
 

施術

 腸骨稜上方の腱起始部や棘突起両側の圧痛点や近傍の経穴(命門、志室、大腸兪)に刺鍼し、低周波電気鍼の施術を行うとともに、足背面の委中、承山への施術も有効です。 また、背筋の伸展で過敏な神経部や炎症部への血流増加が図られるため、背部筋肉の伸展も症状改善に有効です。

 

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ぎっくり腰多発腰部の表面神経   背部筋肉の伸展

2)上肢・肩の疾患

 
 

      四十肩・五十肩

原因 加齢による上腕二頭筋長頭腱、腱板の退行性変化、また短頭の筋や腱の炎症、滑液包炎、靭帯炎など軟部組織の炎症が起こることで、肩関節の運動制限と疼痛が起こります。四十歳以上の加齢で起こることが多く、四十・五十肩とよばれます。
症状 肩部の痛みやだるさ、また肩関節動作が制限され強直などの症状がみられます。その痛みは夜間になると症状が重くなり、肩関節の活動が制限され、特に外転位や外旋位(髪結い、帯締め動作)時に特に痛みを発します。病歴は数か月から1~2年に及ぶことがあるます。
施術 1)上腕二頭筋長頭腱の滑動障害に対しては、上腕二頭筋の長頭腱、並びに筋腹に刺針し、低周波電気鍼施術を行います。この疾患は比較的早く痛みが治まります。 また2)腱板の滑動障害に対しては、腱板や構成する筋肉の経穴(肩膠、巨骨、天枢、翳風、肩貞)に刺鍼し、低周波電気鍼施術を行います。 いずれの疾患も、鍼灸の施術で痛みが緩和され、肩関節の可動域が広がることにより、その後のリハビリを続ける事により自然治癒(完全治癒)する事が多いです。

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 五十/四十肩の炎症発生部位  五十/四十肩の施術治療点

 

       肩こり

原因  持続的な精神的ストレス、前かがみの姿勢での長時間のデスクワーク、パソコン・読書による眼精疲労、運動不足、内臓疾患、更年期障害などが原因で、肩背部の血液循環が低下し、疲労物質が蓄積することにより起こります。
症状  後頚部、肩部、肩甲部周辺の不快感や頭重感、筋緊張感が起こり、またひどくなると頭痛、腕のしびれ、倦怠感、吐き気、集中力の低下など、様々な症状が起こります。
施術  僧帽筋、胸鎖乳突筋、頭板状筋、頭半棘筋,肩甲挙筋、棘上筋、棘下筋の圧痛点の刺鍼し、低周波電気治療を施します。また主な経穴としては、肩井、頬車、天柱、肩中兪、肩外兪を施術します。更に、肩のストレッチ&体操を指導、実施頂くことで治療効果を上げています。

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発生部位の筋肉と神経  肩こり施術治療点

3)上肢の神経麻痺

 
 

     橈骨神経麻痺(下垂症)

原因  この神経は、第5~8頚神経から発して、上腕骨の橈骨神経溝から上腕を走行し腕橈骨筋と上腕骨の間を通って肘関節の外側に達し、浅枝と深枝に別れた後に手の関節の外側を走行します(下図参照)。この走行経路上で、筋肉、骨の圧迫を受けたり自らの損傷によって神経の興奮が起こり、感覚神経系ではしびれ・痛みを発生し、運動神経系では機能障害、麻痺が起こります。
症状  橈骨神経の感覚(知覚)支配領域は、下図に示すように上腕並びに前腕の外側・後面、また手背特に親指と人差し指の知覚を支配するため、これに沿ってしびれ・痛みが起こります。また運動神経系では、親指の伸展・外転が阻害されることが多く、更に、肩関節脱臼、上腕骨骨折、神経の直接損傷など甚だしくは”下垂手”の機能障害・麻痺がおこります(添付下図参照)。
施術  治療施術点としては、橈骨神経溝(経穴では消楽)並びに上腕二頭筋腱の外側の圧痛点(経穴では曲池)を中心に刺鍼します。低周波電気鍼の併用が効果的です。特に、下垂手の場合には更に上腕と前腕の伸筋の後柔捻・リハビリを施し回復を早めます。

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神経皮膚支配領域  橈骨神経疾患の治療点

 
 

      正中神経麻痺

原因  この神経は、第6~8頸神経から発して、腋窩動脈の前面から上腕前面の中央を通り肘窩、円回内筋の両頭を通り抜けて前腕に達し、手根管を通り手掌中央を走行します(下図参照)。この走行経路上で、筋肉、骨の圧迫を受けたり自らの損傷によって神経の興奮が起こり、感覚神経系ではしびれ・痛みを発生し、運動神経系では機能障害、麻痺が起こります。
症状  正中神経は、下図に示すように上腕並びに前腕の中央全面、また手掌の第2~4指の知覚を支配しますが、特に圧迫が受けやすい円回内筋並びに手根管近傍でしびれ・痛みが起こりやすいです。また、この時に手掌の第2~4指に拘縮・しびれを起こします。また、甚だしい場合には”猿手”等の機能障害・麻痺がおこります(添付下図参照)。
施術 治療施術点としては、円回内筋の治療では筋腹の硬結・圧痛点を、また手根管部の治療では舟状骨と豆状骨の間(経穴では大陵)を主に刺鍼します。低周波電気鍼の併用が効果的です。特に、猿手の場合には更に母指球筋の後柔捻・リハビリを施し回復を早めます。

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神経の手支配領域 正中神経疾患の治療点

 
 

     尺骨神経麻痺

原因  この神経は、第8頸神経と第1胸神経から発して、上腕二頭筋溝を通り肘部管を通って前腕の内側(尺側)に達し、尺側主根屈筋の下を通り、手掌内側(尺側)を走行します(下図参照)。この走行経路上で、筋肉、骨の圧迫を受けたり自らの損傷によって神経の興奮が起こり、感覚神経系ではしびれ・痛みを発生し、運動神経系では機能障害、麻痺が起こります。
症状 尺骨神経は、下図に示すように上腕並びに前腕の内側(尺側)、また手掌の第4~5指の知覚を支配しますが、特に圧迫が受けやすい肘部管並びに尺屈神経管(ギオン管)近傍で障害が起こり、しびれ・痛みが起こりやすいです。また、この時に手掌の第4~5指に拘縮・しびれを起こします。また、甚だしい場合には”鷲手”等の機能障害・麻痺がおこります(添付下図参照)。
施術  治療施術点としては、肘部管部の治療では尺側頭部の圧痛点を、また尺屈神経管(ギオン管)部の治療では豆状骨と有鈎骨の間の圧痛点を主に刺鍼します。低周波電気鍼の併用が効果的です。特に、鷲手の場合には更に骨間筋および虫様筋の後柔捻・リハビリを施し回復を早めます。

 

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神経の手支配領域  尺骨神経疾患の治療点

 

3.消化器系疾患

 
 

     過敏性大腸炎

原因 大腸を中心とした腸管の機能異常により慢性の腹痛や便秘異常を起こします。原因としては1)消火器運動の異常、2)消化器の知覚過敏、3)心理的な異常が考えられています。内臓を支配する自律神経の乱れから、便秘、下痢またその繰り返しが起こります。
症状 慢性の腹痛や便秘異常を繰り返します。35歳以下の女性に多い疾患で、腸疾患患者の20~50%が過敏性大腸炎と消化器疾患の中で最も頻度の高い疾患です。精神障害やストレスなどの心理的要因も病態に深く関わっていることが多くみられます。
施術 便通異常のタイプで、1)便秘型と、2)下痢型また3)交代型に分けられますが、1)の便秘型には腹の中下腹部の経穴(中睆、大横、天枢)をまた2)の下痢型では腹部の経穴(気衝)を主に施術し、特に交感神経が優位で起こる下痢型では交感神経を上げぬ施術を行うのが効果的です。また、背部の腸のデルマトーム部の刺針も副交感刺激で良好な効果と考えています。

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 内臓支配する自律神経     便秘型の施術点 

4.耳鼻咽喉科系

 
 

     難  聴

原因  中耳炎、異物や耳垢などによる耳道の閉塞や狭窄が原因で引き起こされる耳介から中耳までの器官の障害で起こる”伝音声難聴”とメニエール病やストレプトマイシンなど薬物の副作用が原因で引き起こされる内耳から脳までの器官の障害で起こる”感音性難聴”に分けられます。
症状 伝音声難聴は内耳の感覚機能は正常である為、音を大きくすると聞き取れるますが、感音性難聴では音を大きくしても聞き取れない違いが有ります。平均の聴力レベルは25㏈以内です。通常の会話で不自由を感じる状態の中等度難聴は45㏈、また補聴器の使用のみ聞こえる状態の高度難聴の聴力レベルは75㏈ほどです。 
施術 突発性難聴は発症後一週間が勝負で一度壊死した聴神経は再生しないというのが現在の医療の考えですが、患者さんの中には10年来の難聴を鍼灸施術で回復し感激されることが多くあります。神経の異常興奮で一時的に機能低下した聴神経が鍼灸施術で活性化し改善されると考えています。耳周辺の経穴(耳門、聴宮、聴会)並びに頚部の経穴(風池、翳風)の刺鍼刺激が、筋緊張を緩め椎骨動脈血流に影響し内耳の血流を改善するとの説も有りますが、詳細は明らかになっていません。これらの経穴を刺鍼しまた電気鍼を併用することにより、治療効果を上げています。 

 

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聴覚神経の経路  難聴(耳鳴り)の施術点

5.婦人科系

 
  

   婦人科疾患(生理不順、不妊症)

原因  ホルモン(プロスタグランジン、エストロゲンなど)のバランス異常で、種々の婦人科疾患が発生します。月経困難症はプロスタグランジンによる子宮筋の過剰収縮。更年期障害は女性ホルモンのエストロゲンの減少・消失が原因です。冷え性、不妊症等も自律神経の不具合が原因のホルモンバランスの異常が主因と考えられています。
症状  月経困難症は、月経に際して頭痛、腰痛、腹痛、などの症状が発生し、吐き気やめまいを伴うことも有ります。 更年期障害では、女性ホルモン(エストロゲン)の消失により脳の交感神経中枢が興奮しやすくな為ホットフラッシュなど種々の自律神経異常をきたすことが多くあります。
施術  月経困難症並びに更年期障害では、自律神経を正常化(副交感神経優位となる)してホルモンバランスをとる為に、まず中枢神経を刺激する経穴(翳風、亜門、風池など)を施術します。また、女性器を支配する神経の出口である仙骨の経穴(次髎、中髎)を施術します。下腹部の刺激より背部にある仙骨の刺激の方が副交感神経を優位にすると考えられています。また、刺鍼施術にお灸施術を併用することで更に施術効果を上げています。
不妊症の治療も同様の施術で行います。患者さんは40歳前後の方が望みをかけて来られますが、治療成果は半年以上かかることも多く、また100(%)懐妊できるとも限らないため、治療に悩む疾患です。しかし、懐妊された喜びは他のどの疾患の患者様より強く、後に旦那様と一緒にお子さんを連れて来られることも有ります。

 

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婦人科系を支配する神経経路 婦人科系疾患の治療点

 
 

     逆 子

原因 胎児は通常母体の体位により回転して骨盤位から安定の体位へ移りますが、子宮の形状異常や胎動の減少などで、回転のタイミングを逸して骨盤位に留まることが有ります。成因は今だ明確にはなっていないようです。
症状 37周を過ぎても4(%)ほどが骨盤位のままで、体位は、殿位が70~75%、足位が25~30%、膝位が1%です。分娩は帝王切開が安全です。
施術 足の小指の先の至陰にお灸を据える鍼灸施術をします。成るべく短い間隔での施術が好ましく一週間に3~5回の施術で、施術中に回転はしませんが、この施術がトリガーとなり、帰宅後の安静時に胎動で自己回転し正常位となることが多いです。この時、胎児の背中のある方を上にして横向きになる姿勢での休息が良いようです。

 

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逆子(骨盤位)の体位  逆子体操

「 参考資料 」

挿入した図は下記の著作から引用させて頂きました。有難うございます。

1)ネッター医学図説 脳・神経系並びに筋骨格系 丸善

2)鍼灸療法技術ガイド Ⅰ及びⅡ         文光堂

3)健康問答 ②      平凡社

4)自律神経・免疫療法 マキノ出版

5)経皮的神経電気刺激療法    医歯薬出版株式会社

6)疾患別臨床マサージ・テクニック    医道の日本

7)感覚の地図帳       講談社

8)体性-自律神経反射の生理学 シュプリンガージャパン

9)やさしい自律神経生理学 中外医学社

10)痛みと鎮痛の基礎知識  技術評論社